カテゴリ:東洋医学概論( 11 )   

肩こり   

肩こり 寒熱を中心とした経筋病の病理

経筋とは経絡が流れている部位の筋という意味である。そこへ寒熱が波及して病証が発生する。
主な機序とその発生原因としての気血津液の不足について概説するのが本論の主旨である。

①経筋病は主に陽経の流れている部位に発生する。
肩こりは陽経の経筋病である。ただし上部の陰経熱によって発生することもある。

②経筋または経絡が痛む病理には色々あるが一つは冷えによる。
素問『素問』痺論(43)「痛む者は寒気多きなり。その痛まずして不仁するは病久しくして入ること深く
、栄衛の巡り渋り、経絡疏となる、故に通ぜず、皮膚を営せず、故に不仁となす。その寒するものは陽気少なく陰気多し」

陽気が少なくなると冷えて痛む。その場合の痛み方は、朝方冷えたとき痛むか、夜に外の陽気が少なくなった時に痛む。

痛みを感じさせないように接触鍼

③冷えたため陽気の発散が悪くなり熱となる場合がある。
「その熱するものは陽気多く陰気少なく、病の気まさり、陽、陰に遭う。故に痺熱となる」
経筋・経絡の痛みは熱が停滞して起こることが多く、上部に行くほどこの傾向は強くなる。

少し感じる程度の瀉の散針

④肩こりの部位は陽位だら熱が停滞し、腰以下の部位は陰位だから寒が停滞しやすい。

虚熱による痛みは散針を用いる。

⑤このような陽経や上焦の陰経の寒熱は気血津液の不足から発生する。
肝虚、脾虚、肺虚、腎虚から起きる。

肝虚  労働 婦人病など血虚による。 凝りは筋の引きつりや筋肉のはり 痙攣ようの引きつり
痃癖という。手をもって按摩してから針を用いる。皮は刺しても肉は刺さない。

脾虚 座り仕事手仕事暴飲暴食 天気の変動などから痰飲による。肌肉に起こり弾力があるが硬い、冷えているときは軟弱である。肩上部の凝りが多い。

肺虚 肺気が巡らず冷えて熱が停滞する。皮毛が主になる。皮膚表面が緊張している自覚症状は軽いが、首から上に頭痛や鼻づまりなどを起していることがある。

腎虚 労働や房事過度などにより下焦の気が虚して上に熱が停滞して起こる。肌肉が硬い。硬結が少ない。自覚的に凝る感じが強い。

結語 肩こりは患部のみでは治らない必ず全身の調整が大事である。つまり本治法が大事である。

症例
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by w74108520 | 2011-08-29 20:06 | 東洋医学概論

基本鍼灸技術覚書   

基本技術覚書

A)基本刺針 密着して軽い押し手を組む
①切経-取穴-押し手までで気が動かせる(胃の気のある沈脈を作る)
②押し手を組みハリを近づけると縮が起こる
③接触後脈が沈み遅くなる
④抜針後脈が中位に行く
⑤両手の脈の寸関尺が揃う

B)脈診
①軽く指を当て適切な位置における
②中脈に合わせて按圧出来る
③指が垂直に下せ陰分の虚実が判る

C)腹診
①各臓の配当位置が判り決められた手順で
一定の速さ”毎秒5㎝ ” で触診できる
②手掌全体で柔らかく滑らすようにでき、かつ
湿燥、寒熱、膨隆、陷下 更に抵抗 圧痛を触知できる
③胃経ラインで適応側や虚実の判断ができる
③手掌を柔らかく密着させ大腹・小腹の虚実判断ができる

D)小里方式での適否判定
①証決定での脈証腹証一貫性
②適応側
③選穴 取穴
④手技
⑤脉状を捉える
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by w74108520 | 2011-03-23 18:19 | 東洋医学概論

国家試験過去問1-1-08 病理と病証   

はりきゅう国家試験 東洋医学病証
選択で正答はどれですか 複数もあります 苦笑)

問1陰虚証の症状でないのはどれか
潮熱
自汗
手足のほてり
盗汗

問2寒証でないのはどれか
温かいものを好む
手足の厥冷
小便は少なく赤い
遅脈

問3虚証にみられないのはどれか
盗汗
酸痛
黄苔
喜温

問4虚証の症状で適切でないのはどれか
短気
下痢
拒按
自汗

問5五心煩熱がみられるのはどれか
気虚
陽虚
血虚
陰虚

問6正邪の盛衰を診るのはどれか
虚実
燥湿
表裏
寒熱

問7痛みの性質と病証との組合せで誤っているのはどれか
刺痛-----血*オ*
重痛-----湿証
隠痛-----気滞
酸痛-----虚証

問8熱証にみられないのはどれか
口渇
鼾声
月経先期
小便自利

問9熱証の特徴でないのはどれか
下痢
発汗
口渇
動悸

問10八綱のうち病証を総括するのはどれか
表裏
寒熱
虚実
陰陽

問11八綱病証で疾病の性質を示すのはどれか
陰陽
寒熱
虚実
表裏

問12八綱病証で病位を診るのはどれか
寒熱
陰陽
虚実
表裏

問13八綱病証で病勢を示すのはどれか
寒熱
陰陽
虚実
表裏

問14陽虚の症状で適切でないのはどれか
畏寒
小便不利
自汗
四肢厥冷

問15冷え症で他覚的にも冷えが認められる状態を何というか
傷寒
悪風
厥冷
悪寒

問16気滞の症状でないのはどれか
イライラ
息切れ
腹部の脹った痛み
胸苦しい

問17気滞の症状はどれか
目のかすみ
出血
手足のしびれ
脹痛

問18四肢のふるえとめまいとが共にみられる病証はどれか
脾血虚
肝血虚
肺陰虚
腎陽虚

問19胃熱による症状はどれか
五更泄瀉
梅核気
心下痞
消穀善飢

問20肝の病証に含まれるのはどれか
下痢
喘鳴
頭痛
動悸

問21肝の病証に属するのはどれか
息切れ
手足の冷え
のどのつかえ
頻尿

問22胸脇苦満を示すのはどの臓の病か





問23胸脇苦満を呈する臓はどれか





問24五臓とその症状との組合せで誤っているのはどれか
脾-----肌肉がやせる
心-----顔色が赤い
肺-----体臭が生臭い
肝-----汗をよくかく

問25四肢の冷え、胸痛、畏寒を示す病証はどれか
脾陽虚
心陽虚
腎陰虚
肝陰虚

問26小腹不仁を示す臓の病はどれか





問27「消渇」の現代病名はどれか
糖尿病
悪性新生物
心筋梗塞
高血圧症

問28心の病証に属さないのはどれか
健忘
難聴
言語障害
不眠

問29腎の症状として誤っているのはどれか
耳鳴り
四肢の冷え
目の充血
性欲減退

問30腎の症状はどれか
脇痛
難聴
胸痛
血便

問31肺の病証でみられるのはどれか
耳鳴り
腰痛
不眠
咳嗽

問32肺の病証にみられないのはどれか
短気
無汗
梅核気
湿疹

問33次の文で示す患者の病証として適切なのはどれか
「38歳の男性
半年前の失職以来、不安と不眠がある
起立時のめまいと軽度の動悸とを訴えている」
腎気虚証
肝陰虚証
脾陽虚証
心血虚証

問34次の文で示す病証について、問に答えよ
「咽喉の閉塞感、怒りっぽい、抑うつ、胸脇苦満」
本病証に用いる鍼の補瀉法で適切なのはどれか
呼気に刺入し、吸気に抜鍼する
経穴をよく按じてから刺入する
抜鍼後、鍼孔を指で塞がない
細い鍼を用いる

問35次の病証を示す臓腑はどれか
「発育の遅れ、難聴、不眠、内臓下垂」





問36次の文で示す患者の病証はどれか
「顔に精気が感じられず、いつも腰がだるいという
小腹部は力がなくフワフワしている
最近、耳が聞こえにくくなった」
心の病証
腎の病証
肝の病証
脾の病証

問37次の文で示す臓腑の病証はどれか
「食後の腹脹、下痢、腹鳴がある」
三焦
小腸

膀胱

問38次の文で示す病証に関係する臓はどれか
「手足の筋のひきつれ、季肋部痛、めまいや目の乾燥がある」





問39腹痛、喜按、畏寒、四肢の冷えがみられる脾の病証はどれか
脾気虚
脾胃湿熱
脾陰虚
脾陽虚

問40脾の病証でみられる症状はどれか
心悸亢進
性欲減退
胸脇苦満
腹部膨満感

問41脾の病証として適切でないのはどれか
全身倦怠感
腹部膨満感
性欲減退
消化不良

問42脾の病証でみられないのはどれか
咽喉の閉塞感
軟便
崩漏
全身倦怠感

問43脾虚の症状はどれか
健忘
咳嗽
内臓下垂
筋けいれん

問44次の文で示す奇経八脈病証はどれか
「腹がはり、腰は弛緩して、力が入らず、水の中に座っているような無力と寒気を覚える」
督脈
任脈
衝脈
帯脈

問45胸苦しさと手掌のほてりを呈する経脈病証の所見で適切でないのはどれか
頭痛
前腕の痛み
腋の腫れ
咽の渇き

問46次の文で示す経脈病証はどれか
「口が苦い、缺盆の部分と腋下が腫れ、膝の外側が痛む」
脾経
胆経
腎経
胃経
問47喉の腫れ、鼻出血および下の歯の痛みを呈する経脈病証はどれか
三焦経
胆経
膀胱経
大腸経

問48経絡病証で背骨のこわばり、頭痛の症状を呈するのはどれか
帯脈
督脈
衝脈
任脈

問49喉の腫れ、鼻出血および下顎歯の痛みはどの経絡病証か
足の少陽胆経
手の太陰肺経
足の太陽膀胱経
手の陽明大腸経

問50次の病証を示す経路はどれか
「空腹でも食欲がなく膝から下が冷える
腰痛があって臥すことを好む」
足の少陽胆経
足の少陰腎経
足の太陰脾経
足の陽明胃経

問51次の文で示す経絡病証について適切なのはどれか
「のどが渇き、側胸部が痛む、上肢の前面内側がしびれて痛み、手掌が熱をもって痛む」
心経
小腸経
三焦経
肺経

問52次の文で示す経絡病証について適切なのはどれか
「目の痛みが強く、頭痛もある、背中は張って腰は折れんばかりに痛み、下腿後面の筋がひきつれる」
肝経
胆経
膀胱経
腎経

問53次の文で示す経絡病証はどれか
「咳が出て胸苦しく、胸に熱感があり息切れし、手掌がほてる」
腎経
肺経
脾経
心経

問54次の文で示す経絡病証はどれか
「腰が痛み、季肋部が張って苦しく、顔色は青黒い」
小腸経
肝経
三焦経
脾経

問55次の文で示す症状はどの経絡病証か
「空腹感はあるが食欲はなく、顔色は黒ずみ、呼吸が苦しくせき込む」
手の太陰肺経
足の少陰腎経
足の厥陰肝経
足の太陰脾経

問56次の文で示す症状を訴えるのはどの経絡の病証か
「腋窩部の腫れ、上肢のひきつれ、手掌のほてり及び季肋部のつかえ」
手の陽明大腸経
手の厥陰心包経
手の太陽小腸経
手の少陽三焦経

問57次の文で示す病証に関係する経絡はどれか
「咳、喘鳴、胸が脹り満ちた感じがあり、上肢の内側に沿った冷えと痛みがある」
手の少陽三焦経
手の厥陰心包経
手の少陰心経
手の太陰肺経

問58次の文で示す病証に関係する経絡はどれか
「頸が腫れ、肩から上腕後内側を経て小指にいたる部位の激しい痛み、難聴がある」
手の太陽小腸経
手の少陰心経
手の太陰肺経
手の陽明大腸経

問59次の文で示す病証を呈する経絡はどれか
「前胸部から心下部への圧迫感、腹部膨満感があり、下肢内側の腫れと痛み、足の母指の麻痺がある」
足の陽明胃経
足の太陽膀胱経
足の太陰脾経
足の少陽胆経

問60腎経の経脈病証の所見として適切でないのはどれか
足底のほてり
立ちくらみ
季肋部のつかえ
血痰

問61次の文で示す是動病の経脈はどれか
「食するともどし、胃部が痛み、腹が張る、よくおくびし、放屁すればすっきりする、全身が重く感じる」
肺経
胃経
大腸経
脾経

問62任脈病証に含まれるのはどれか
関節腫脹
手足の麻痺
月経異常
頭痛

問63陽*キョウ*脈病証の症状はどれか
排尿障害
目の痛み
下痢
月経異常

問64三陰三陽病証で往来寒熱、胸脇苦満が現れるのはどれか
少陰病
太陽病
太陰病
少陽病

問65三陰三陽六病位と体幹の部位との組合せで誤っているのはどれか
陽明-----腹面の表
厥陰-----側面の裏
太陽-----背面の表
太陰-----背面の裏

問66半表半裏証でみられないのはどれか
往来寒熱
口が苦い
胸脇苦満
悪風

問67六経病証で病邪が最後に達するのはどれか
太陰経
少陽経
厥陰経
陽明経

問68六経病証について正しい組合せはどれか
少陰経病-----難聴が起こる
少陽経病-----陰嚢が縮む
太陰経病-----咽頭が渇く
厥陰経病-----腰背が強ばる

引用
http://www.kakomon-club.com/
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22東医概論   08章 病理と病証   68問

 
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by w74108520 | 2011-02-14 22:12 | 東洋医学概論

五臓の生理   

五臓の生理
1. 肝

1)精神作用 魂を蔵する(五神)

肝は将軍の官、謀慮これより出ず(素問・霊蘭祕典論篇)

判断力や計画性などの精神活動を支配し、随意的な計画・判断などを行う。

罷極の本、魂の居なり(素問・六節臓象論篇)

「罷極」とは疲れ切ることで肝は疲労に耐える根本と解釈できる。

魂は肝にあり、死体が朽ちるときに天に昇る陽性の霊で、内面のこころと密接な関係を持つ。肝がしっかりしていれば内外の変化にすばやく対応して適切な行動がとれる。不健全だといらいらしたり(五有余)、逆におどおどしたりする(五不足)。

2)気血水との関係 血を蔵する

肝は血を蔵する(霊枢・本神篇)

血によって魂が営まれる。身体各部の血流量を調整する。夜臥床して眠くなり、やがて眠りにつくのは多量の血が肝臓に還流し、脳に血が少なくなるため。肝は動き出したときに四肢に血を分配し、四肢の筋の運動を活発にさせる。肝の働きが正常でないと血の上逆・配分の不足などによりめまいなどの異常を生じる。

3)筋を主る(五主)

肝の充は筋にあり(素問・六節臓象論篇)

肝の合は筋なり、その栄は爪なり(素問・五蔵生成篇)

肝は筋を主る(素問・宣明五気篇)

いずれも肝が充実していると筋肉も充実する。肝の働きが損なわれると筋の働きも異常を生じる。逆に筋の状態が肝に影響する。

4)爪は肝の華(五華)

その華は爪にあり(素問・六節臓象論篇)

肝が充実しているとその充実した様子は爪に現れる。肝が正常でないと爪に色つやがなくなったりする。

5)目に開竅する(五官)

肝は目に開竅する(素問・金匱真言論篇)

肝気は目に通ず。肝和すれば則ち目は能く五色を分かつなり(霊枢・脈度篇)

肝は目を通して外界と交流する。肝の状態は目のものを視る機能に反映される。肝の働きが衰えると目が疲れやすくなり、逆に目を酷使すると肝の機能を損なうこともある。

6)その他

肝の液は涙たり(素問・宣明五気篇)

肝は目と通じて目から出る涙は肝の液である (五液) 。肝の働きが悪いと目が乾いたり、涙が出すぎたりする。

肝は疏泄を主る 

疏泄作用とは体の隅々まで円滑に気血を巡らせること。血の運行と津液の代謝を促進し、脾胃の消化吸収・胆汁分泌・腸への排泄を促進する。疏泄作用の低下で脳への血液供給がうまくいかずに、思惟活動に影響を与える。

 
2. 心

1)五臓六腑の統括、生命の源

心は君主の官、神明これより出ず(素問・霊蘭祕典論篇)

五蔵六府の大主、精神の舎るところなり。その蔵堅固にして、邪容ること能わざるなり。之に容るときは、則ち心傷らる。心傷らる時は則ち神去る。神去る時は則ち死すなり。故に諸々の邪の心にあるものは皆心の包絡にあるなり。包絡は心主の脈なり(霊枢・邪客篇)

五臓六腑を統括し、人間の生命活動にとって最も重要で、心が損傷されると、死となる。心の外衛として心包が守る。従って心が損傷される前にまず心包が侵襲される。

2)精神作用 神を蔵する(五神)

心は生の本、神の変なり(素問・六節蔵象論篇)

神は心にあり生命活動の根本で、神がなくなれば死亡する。神は全ての精神活動を支配し、その中心となっている。五臓六腑の調和を図り、意識的・無意識的活動を適切に行う。様々な要因で神が不安定になると、意識的・無意識的活動が適切でなくなったり、不調和を生ずる。

3)気血水との関係  脈を主る(五主)

心は血脈を主る(素問・萎論篇)

心の充は血脈にあり(素問・六節臓象論篇)

脈を介して血を全身にくまなく運行し、臓腑や皮肉筋骨などの活動を支える。心の機能が損なわれると脈拍に異常が現れ、血の巡りが悪くなる。

4)面色は心の華(五華)

その華は面にあり(素問・六節臓象論篇)

心の合は脈なり、その栄は色なり(素問・五臓生成篇)

心が充実しているとその充実した様子は面色に現れる。顔面の色つやは血液の運行状態を反映し、心が正常でないと面色が白っぽく、つやがなくなったりする。

5)舌に開竅する(五官)

心は舌に開竅する(素問・金匱真言論篇)

心は舌を主る(素問・陰陽応象大論篇)

舌は音声の機なり(霊枢・憂恚無言篇)

心は舌の運動を支配し味覚を主る。心の蔵する神が思ったこと、考えたことを表に出すとき言語によって表現する。言語表現するとき、舌の運動が必要となる。

心気は舌に通ず。心和すれば則ち舌は能く五味を知るなり(霊枢・脈度篇)

舌は味覚を受け持っている。心の働きが衰えると味覚異常や言語障害が起こったりする。

6)その他

心の液は汗たり(素問・宣明五気篇)

心は火の性質を持ち、暑熱により汗が出る。汗は心の液である (五液) 。心の働きが悪いと出るべき汗が出なかったり(無汗)、汗が出過ぎたりする(自汗)。
3. 脾

1)営を蔵する、後天の本となる

脾胃は倉廩の官(素問・霊蘭祕典論篇)

脾胃・大腸・小腸・三焦・膀胱は倉廩の本、営の居なり(素問・六節臓象論篇)

倉廩とは米蔵のことで、脾は胃と共同して働き、飲食物の消化や吸収を主り、後天の精を取り出す。さらにこれらを肺に送り、気・血・津液に変化させ、全身に送る。脾の働きによって吸収・配布される栄養物には、営気が蔵されて、運行を主る。脾がうまく働かないと腹痛・下痢等消化・吸収の異常を生じ、全身倦怠、出血しやすいなどの症状が現れる。

脾は運化を主る 

運化とは水穀を消化して(転化)、後天の精や津液・血・営衛などを吸収して全身に送り出す(運輸)。運化がうまくいかないと、消化・吸収の異常や営気の巡りの異常、津液の停滞等が起こり様々な症状を呈する。

脾は昇清を主る 

脾の運化作用の際に吸収したものを胃から上の肺へ送る。

2)精神作用 意・智を蔵する(五神)

脾は意を蔵す(素問・宣明五気篇)

意は記憶や思考を含んだ精神活動を支配する。意が傷れると脾が落ち着かなくなる。

3)気血水との関係 津液を作り出す

脾は胃をしてその津液を行わせるを主るなり(素問・厥論篇)

脾は水穀から津液を吸収し、肺に送る。脾は津液を作り出し全身に輸布する。脾が正常でなくなると食欲の異常、食べてもおいしく感じず、唇やその周囲、口内が荒れたりする。

脾は統血を主る 

統血とは営気を脈中に送ることにより、血が脈外へ漏れないようにし、順調に巡るように働く。統血作用の低下で血が脈外へ漏れ、血便、血尿、不正性器出血などを生じる。

 

4)肌肉を主る(五主)

脾は身の肌肉を主る(素問・萎論篇)

脾胃・大腸・小腸・三焦・膀胱はその充は肌にあり(素問・六節蔵象論篇)

脾は営気を身体のすみずみまで巡らせる。特に肌肉に行き渡らせて張りを与える。脾の働きが悪いと肉付きが痩せ、四肢無力となる。

5)口に開竅する(五官)、唇は脾の華(五華)

脾胃は倉廩の官、五味これより出ず(素問・霊蘭祕典論篇)

脾気は口に通ず。脾和すれば則ち口は能く五穀を知るなり(霊枢・脈度編)

脾胃・大腸・小腸・三焦・膀胱はその華は脣四白にあり(素問・六節臓象論篇)

脣とは唇のことで、四白とは広々とした光のある場所で、脾の働きが正常ならば食べたものをおいしいと感じ、唇やその周りの色つやも良い。脾が正常でないと食欲が減退し、食べ物をおいしく感じなくなったり、唇やその周囲、口内が荒れたり、色つやがなくなったりする。

6)その他

脾の液は涎たり(素問・宣明五気篇)

脾は口と通じて、口から出る涎は脾の液である (五液) 。脾の働きが悪いと涎が流れず口の中が乾いたり、涎が出過ぎたりする。

 
4. 肺

1)精神作用 魄を蔵する(五神)、心を扶けて臓腑や器官の働きを調節する

肺は相傅の官、治節これより出ず(素問・霊蘭祕典論篇)

相傅とは付き添う、相従うなどの意味で、治節とは「節」を治める則ち秩序を保つ、統率するという意味である。心と肺は協調して気血を全身に行き渡らせることにより、各臓腑・器官に気血を配分して生理的な活動を行わせる。

肺は魄の処なり(素問・六節臓象論篇)

魄は肺に存在し、死後長く死体にとどまって離れず、死体が朽ちるときに地に還る陰性の霊で、本能や肉体と密接な関係を持つ。しっかりしていれば日常動作を適切に行ったり、痛みやかゆみなどの感覚を感じたり、注意を集中したりする。魄が衰えると気迫が衰えたり、注意力が散漫になったり、物忘れがひどくなり、皮膚感覚が鈍くなる。

2)気血水との関係 気を主る

肺は気の本(素問・六節臓象論篇)

肺は気を蔵す。気によって魄が営まれる(霊枢・本神篇)

肺は呼吸により天の陽気を取り入れ、脾胃の働きによって生じた地の陰気が合して宗気・衛気・営気・津液・血を生じる。営気と血は脈中を行き、衛気と津液は肺の働きで全身に散布される。これらに臍下に集まる原気が加わり、気を全身にくまなく行き渡らせる。肺の働きが正常でないと呼吸の異常や発声の異常を生じる。

3)皮毛を主る(五主)、毛は肺の華(五華)

肺の充は皮にあり(素問・六節臓象論篇)

肺の合は皮なり、その栄は毛なり(素問・五蔵生成篇)

肺は皮毛を主る(素問・宣明五気篇)

肺は陽性の気(宗気、衛気)と津液を巡らすことにより、皮毛に潤いを与え、養う。環境の変化に対応して皮膚の収縮・弛緩する。肺の働きが損なわれると皮毛の働きに異常を生じ、皮膚の乾燥や湿疹・浮腫などを生じる。また外邪に侵されやすくなる。

4)鼻に開竅する(五官)

肺は鼻に開竅する(素問・金匱真言論篇)

肺気は鼻に通ず。肺和すれば則ち鼻は能く臭香を知るなり(霊枢・脈度篇)

肺は鼻を通して天の陽気(清気)を体内に取り入れ、古くなった気(濁気)を排出する。また鼻により臭いをかぎ分ける。肺の働きが正常でなくなると鼻が詰まったり、乾きやすくなったりして臭いがわかりにくくなる。

5)その他

肺の液は涕たり(素問・宣明五気篇)

肺から出る涕は肺の液である (五液) 。肺の働きが悪いと涕の分泌異常で鼻が乾いたり、涕が出すぎたりする。

肺は宣発・粛降を主る 

宣発とは昇発と発散のことで、呼気により濁気を吐き出したり、津液と気を全身に行き渡らせ、そう理を調節する。「粛降」は吸気により、清気を吸い込んだり、津液を腎や膀胱に下輸したり、気道を清潔にする。

肺は水の上源 

脾の働きにより胃から上部に運ばれた津液を全身に散布する。

 
5. 腎

   1)精神作用 精・志を蔵する(五神)、生命力の源である元気をもたらす

   腎は作強の官、伎巧これより出ず(素問・霊蘭祕典論篇)

 作強とは生命力と生長・生殖能力を盛んにすることで、腎の働きが盛んになると生長し・生殖能力を生じるようになる。また同時に元(原) 気が盛んで活動的になり、疾病にもかかりにくい。伎巧とは技巧と同義で巧みな技のこと。腎の働きが活発だと根気のいる細かい作業をやり通す気力も湧く。

  腎は蟄を主り、封蔵の本、精の処なり(素問・六節臓象論篇)

  蟄は隠れる、閉じこもるという意味で、封蔵とは大事にしまっておくことで、腎は生命の根本である先天の精を大事にしまっている。先天 の精は両親より受け継いだ精のことで、生命の源となり、人体の諸器官を構成し、生命力と生長・生殖能力の原動力となる。また後天の精によって補給され、気に変化して原気となって臍下丹田に集まり、基礎活力となる。腎気が衰えると元気がなくなり活動が低下し身体が冷える。生殖能力が低下し、疾病にかかりやすくなる。

腎は志を蔵す(素問・宣明五気篇)

志は腎に蔵され、目的を持って思ったり、思いを持続させる。志が傷れると記憶の混濁や忘却を生ずる。

2)気血水との関係 津液を主る

腎は水の蔵、津液を主る(素問・逆調論篇)

脾が水穀から分離し、肺が全身に散布し、不要になった津液を腎が集め処理し、津液全体を調整する。腎の働きが正常でないと浮腫・尿閉、頻尿・下痢などの津液の調節異常を生じる。

3)骨を主る(五主)、髪は腎の華(五華)

腎の華は髪にあり、その充は骨にあり(素問・六節臓象論篇)

腎の合は骨なり、その栄は髪なり(素問・五蔵生成篇)

腎は骨を主る(素問・宣明五気篇)

骨は髄の府(素問・脈要精微論篇)  髄は骨の充なり(素問・解精微論篇)

髄は骨の中にあり、骨を滋養する。腎精は髄を生育し、骨の中にある髄は骨を栄養する。腎が正常なら精が十分で、髄も充実して骨や歯も丈夫で、髪も黒々してつやがある。腎精が不足すると発育不良や歯牙や骨の異常、白髪・脱毛などが起こる。

4)二陰と耳に開竅する(五官)

腎気は耳に通ず。腎和すれば則ち耳はよく五音を知るなり(霊枢・脈度篇)

腎は耳を通して外界と交流し、腎精がしっかりしていれば耳は音声をよく聞き分けて判断できる。腎は二陰に開竅する(素問・金匱真言論篇)

腎は水分を調節し、調節した結果の排泄物を体外に排泄する。排泄物の排出口が二陰(前陰、後陰)である。腎の働きが正常でなくなると難聴や耳鳴、大小便の異常が起こる。

5)その他

腎の液は唾たり(素問・宣明五気篇)

腎から出る唾は腎の液である (五液) 。腎は歯牙を支配していて、唾は歯牙の生えているところから出る。腎の働きが悪いと唾の分泌異常で口が乾いたり、唾が出すぎたりする。

腎は納気を主る 

納気とは深い呼吸に関わり、吸気を臍下丹田に取り入れ、精を原気に化し、活性化する。納気が十分でないと呼吸が浅くなったり、呼吸困難になったりする。

腎は水の下源 

肺が入り口部分で、腎が出口部分で水分調節している。
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by w74108520 | 2011-02-14 16:11 | 東洋医学概論

五行色体表   

五 行 木  火  土  金  水 
五 臓 肝  心  脾  肺  腎 
五 腑 胆  小腸 胃 大腸 膀胱
五 役 色  臭  味  声  液 
五 邪中風 傷暑 飲食労倦 傷寒 中湿
五 根 目  舌 口 唇 鼻  耳 
五 支 爪  毛  乳  息  髪 
五 主 筋 血脈 肌肉 皮膚 骨 
五 変 握  憂 吃逆 咳  慄 
五 精 魂  神 意・知 魄 精・志
五 志 怒  喜  思 憂・悲恐・驚
五 悪 風  熱  湿  燥  寒 
五 色 青  赤  黄  白  黒 
五 香 腴  焦  香  腥  腐 
五 味 酸  苦  甘  辛  鹹 
五 声 呼  言  歌  哭  呻 
五 液 涙  汗  涎  涕  唾 
五 音 角  徴  宮  商  羽 
五 労 久歩 久視 久座 久臥 久立
五 季 春  夏 土用 秋  冬 
五 方 東  南 中央 西  北 
五干支甲乙 丙丁 戊己 庚辛 壬癸
五 穀 麦  黍  粟  稲  豆 
五 畜 鶏  羊  牛  馬  豕 
五 菜 韮  薤 葵  葱 豆の葉

五有余
五臓の気過剰
怒 笑 涇溲不利(便秘) 喝息 ,満(膨満感)

五不足
五臓の気不足
恐 憂悲 四肢不用 息利少気 厥逆

五脈
脈の状態
弦 洪 緩 毛 石
弦 洪(鈎) 緩 浮毛 沈石
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by w74108520 | 2011-02-14 16:07 | 東洋医学概論

病証論 試験問題と解答201101-1   


十二経と奇経のどの変動でしょうか
例題1
甚だしければ高い所に登って歌いたがり、
衣服を脱ぎ捨てて走りたがる
答え 足の陽明胃経
例題2
脊柱のこわばり、頭・足・下腹部から胸・心臓の痛み、
痔、水腫、遺尿、不妊(女)
答え 督脉

問題

①咽喉の痛み、顎の腫れ、振り返れない、
肩が抜けるように痛み、腕が折れ
るように痛む

②頭・目・項部が抜けるように痛む、
脊柱が痛み、腰が折れるように痛む、
股関節は曲がらず、
膝関節は結ばれるようで
脛は裂かれるようである

③手掌が熱する、上肢がひきつる、
腋が腫れる、
甚だしければ胸脇がつかえ

④逆気して泄 (逆気:悪心嘔吐・
めまい・頭痛/泄:下痢)

⑤躁鬱、汗、鼻出血、顔面の麻痺、
頚部の腫れ、咽喉の麻痺、
腹水、膝が腫れ痛む、
足背の痛み、消穀善飢

⑥痔・おこり・精神異常、
頭頂部の痛み、目黄、涙、
鼻出血、項・背・腰・
尻・膝・脛・足の痛み
⑦舌が痛む、体を動かすことができない、
食滞、心煩、心下急痛、泄瀉、尿
閉、黄疸、下肢内側の腫れ痛み

⑧口苦、溜め息が多い、心脇部痛、
寝返りができない、顔色がくすみ、皮膚
に光沢がない

⑨所生病 目黄、口の乾き、鼻出血、
咽喉の麻痺、肩前面と上肢の痛み、示指の痛み
虚 証 寒気により戦慄しなかなか温かさが戻らない

⑩知飢不食、顔色が黒い、気喘、喀血、立ちくらみ、
気が足りなければ物事に恐れる

答え
①手の太陽小腸経
②足太陽膀胱経
③手厥陰心包絡
④衝脈
⑤足陽明胃経
⑥足太陽膀胱経
⑦足太陰脾経
⑧足少陽胆経
⑨手陽明大腸経
⑩ 足少陰腎經


 
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by w74108520 | 2011-01-21 16:09 | 東洋医学概論

2-1 経絡病証   

2-1経絡病証
引用
十二経脈病証『 霊枢・経脈篇 』
奇経八脈病証『 難経二十九難 』
2-1-1-1
【 手の太陰肺経 】 
1 是動病
肺の脹満・膨満があり喘咳、
缺盆の中が痛む、
甚だしければ両手を交えて苦しむ。
2 所生病 咳、喘、心煩、口渇、胸満、
上肢前面外側の痛み、手掌のほてり。
3 実 証 肩背痛、風寒感冒で自汗、
傷風、小便頻数、あくび。
4 虚 証 肩背痛で寒気を恐れ、
呼吸が浅く切迫し小便の色が変化
2-1-1-2
【 手の陽明大腸経 】 
1 是動病 歯痛、頚部が腫れる
2 所生病 目黄、口の乾き、鼻出血、
咽喉の麻痺、肩前面と上肢の痛み、示指の痛み
3 実 証 本経経脈の走行部位の熱腫
4 虚 証 寒気により戦慄しなかなか温かさが戻らない
2-1-1-3
【 足の陽明胃経 】 
1 是動病
寒くて振るえる、呻る、欠、顔が黒い、
病が至れば人や火を嫌い、木の音を
聞くとびっくりして驚く、心が動かないよう引き篭もる。
甚だしければ
高い所に登って歌いたがり、
衣服を脱ぎ捨てて走りたがる
2 所生病
躁鬱、汗、鼻出血、顔面の麻痺、
頚部の腫れ、咽喉の麻痺、腹水、
膝が腫れ痛む、足背の痛み、
消穀善飢
3 実 証 体の前面が発熱する。
(胃の表現として)消穀善飢、小便色黄
4 虚 証 体の前面が冷え、戦慄する。
(胃の表現として)脹満
2-1-1-4
【 足の太陰脾経 】 
1 是動病
舌が強ばり、物を食べると吐く、
胃.部痛、腹脹、げっぷ、
おならやげっぷで楽になる
、体が衰え、体が重い
2 所生病
舌が痛む、体を動かすことができない、
食滞、心煩、心下急痛、泄瀉、尿
閉、黄疸、下肢内側の腫れ痛み、
足第1 指の麻痺
※ 実証・虚証の記載無し
2-1-1-5
【 手の少陰心経 】 
1 是動病 咽喉が乾く、心部が痛む、
口渇し飲み物を飲みたがる
2 所生病 目黄、脇痛、
上肢前面内側の痛み、
手掌のほてりと痛み
※ 実証・虚証の記載無し
2-1-1-6
【 手の太陽小腸経 】 
1 是動病
咽喉の痛み、顎の腫れ、振り返れない、
肩が抜けるように痛み、腕が折れ
るように痛む
2 所生病 耳聾、目黄、頬の腫れ、
頚・顎・肩・上肢後面内側の痛み
※ 実証・虚証の記載無し
2-1-1-7
【 足の太陽膀胱経 】 
1 是動病
頭・目・項部が抜けるように痛む、
脊柱が痛み、腰が折れるように痛む、
股関節は曲がらず、
膝関節は結ばれるようで
脛は裂かれるようである
2 所生病
痔・おこり・精神異常、頭頂部の痛み、
目黄、涙、鼻出血、項・背・腰・
尻・膝・脛・足の痛み。
足の第5 指の麻痺
※ 実証・虚証の記載無し
2-1-1-8
【 足の少陰腎経 】 
1 是動病
知飢不食、顔色が黒い、気喘、喀血、立ちくらみ、
気が足りなければ物事
に恐れる
2 所生病
口が熱し、舌が乾き、咽喉が腫れる、
心煩、心痛、黄疸、腰部・大腿内側
の痛み、冷え、しびれ、横になるのを好む、
足底のほてり
※ 実証・虚証の記載無し
2-1-1-9
【 手の厥陰心包経 】 
1 是動病
手掌が熱する、上肢がひきつる、
腋が腫れる、
甚だしければ胸脇がつかえ
る、心悸、面紅、目黄、笑い続ける
2 所生病 心煩、心痛、掌のほてり
※ 実証・虚証の記載無し
2-1-1-10
【 手の少陽三焦経 】 
1 是動病 耳鳴り、咽喉の腫れと麻痺
2 所生病 汗、目尻の痛み、頬の痛み、
耳後・肩・上肢の外側が痛む
、第4 指の痛み
※ 実証・虚証の記載無し
2-1-1-11
【 足の少陽胆経 】 
1 是動病
口苦、溜め息が多い、心脇部痛、
寝返りができない、顔色がくすみ、皮膚
に光沢がない、足が外反し熱する
2 所生病
頭痛、顎の痛み、目尻の痛み、
缺盆の腫れ・痛み、腋下の腫れ、汗、寒く
て振るえる、おこり、
下肢外側の痛み、
足の第4 指の麻痺
※ 実証・虚証の記載無し
2-1-1-12
【 足の厥陰肝経 】 
1 是動病
腰痛で仰臥・伏臥できない、
男性は疝気、女性は小腹が腫れる、
甚だしければ咽喉が乾き
顔色がすすけて青黒くなる
2 所生病 胸満、嘔吐、泄瀉、疝気、遺尿、尿閉
※ 実証・虚証の記載無し
2-1-2
. 奇経八脈病証 :『 難経二十九難 』
奇 経 病 症
① 督 脈 脊柱のこわばり、
頭・足・下腹部から胸・心臓の痛み、
痔、水腫、遺尿、不妊(女)
② 任 脈 疝気、帯下、月経異常、
腹部皮膚の痛み、かゆみ
③ 衝 脈 逆気して泄
(逆気:悪心嘔吐・めまい・頭痛/泄:下痢)
④ 帯 脈 腹がはり、
腰は(水中に座っているように)冷える、
フワフワ座りが悪い
⑤ 陽.脈 陰が緩んで陽がひきつる、
目が痛む (下肢内側・前半身の緩み、
後半身のひきつり)
⑥ 陰.脈 陽が緩んで陰が引きつる
(下肢外側・後半身の緩み、前半身の引きつり)
⑦ 陽維脈 寒熱に苦しむ
⑧ 陰維脈 心臓部痛に苦しむ
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by w74108520 | 2011-01-18 19:37 | 東洋医学概論

脈訣 宋 崔嘉彥(1174-1189年)   

脈訣

宋 崔嘉彥

人身之脈 本乎榮衛 榮者陰血 衛者陽氣 榮行脈中 衛行脈外 脈不自行 隨氣而至
氣動脈應 陰陽之義 氣如橐□ 血如波瀾 血脈氣息 上下循環 十二經中 皆有動脈
手太陰經 可得而息 此經屬肺 上系吭嗌 脈之大會 息之出入 初持脈時 令仰其掌
掌後高骨 是謂關上 關前為陽 關後為陰 陽寸陰尺 先後推尋 寸關與尺 兩手各有
揣得高骨 上下左右 男女脈同 惟尺則異 陽弱陰盛 反此病至 調停自氣 呼吸定息
四至五至 平和之則 三至名遲 遲則為冷 六至為數 數即熱証 轉遲轉冷 轉數轉熱
在人消息 在人差別 遲數即得 即辨浮沉 浮表沉裡 深淺酌斟 浮數表熱 遲數裡熱
浮遲表虛 沉遲冷結 察其六部 的在何處 一部兩經 一臟一腑 左寸屬心 合於小腸
關為肝膽 尺腎膀胱 右寸主肺 大腸同條 關則脾胃 尺命三焦 不特臟腑 身亦主之
上下中央 三部分齊 寸候胸上 關候膈下 尺候於臍 直至跟踝 左脈候左 右脈候右
病隨所在 不病者否 浮沉遲數 有內外因 外因於天 內緣於人 天則陰陽 風雨晦明
人喜怒憂 思悲恐驚 外因之浮 則為表証 沉裡遲寒 數則熱盛 內因浮脈 虛風所為
沉氣遲冷 數躁何疑 表裡寒熱 風氣冷燥 辨內外因 脈証參考 浮沉之脈 亦有當然
浮為心肺 沉屬腎肝 脾者中州 浮沉之問 肺重三菽 皮毛相得 六菽為心 得之血脈
脾九菽重 得於肌肉 肝與筋平 重十二菽 惟有腎脈 獨沉之極 按之至骨 舉指來疾
脈理浩繁 總括於四 六難七難 專衍其義 析而言之 七表八裡 又有九道 其名乃備
浮而無力 是名芤脈 有力為洪 形狀可識 沉而有力 其脈為實 無力微弱 伏則沉極
脈遲有力 滑而流利 無力緩澀 退同一例 數而有力 脈名為緊 小緊為弦 疑似宜審
合則為四 離為七八 天機之秘 神授之訣 舉之有餘 按之不足 泛泛浮浮 如水漂木
芤脈何似 絕類慈蔥 指下成窟 有邊無中 滑脈如珠 往來轉旋 舉按皆盛 實脈則然
弦如張弦 緊如細線 洪較之浮 大而力健 隱隱約約 微渺難尋 舉無按有 便指為沉
似遲不遲 是謂之緩 如雨沾沙 澀難而短 遲則極緩 伏按至骨 濡則軟軟 弱則忽忽
既知七表 又知八裡 九道之形 不可不記 諸家九道 互有去取 不可相無 可以相有
過於本位 相引曰長 短則不及 來去乖張 形大力薄 其虛可知 促結俱止 促數結遲
代止不然 止難回之 三脈皆止 當審毫厘 牢比弦緊 轉堅轉勁 動則動搖 厥厥不定
細如一線 小而有力 弦大虛芤 脈曰改革 渙漫不收 其脈為散 急疾曰數 脈最易見
即脈求病 病無不明 病參之脈 可決死生 然有應病 有不相應 此最宜詳 不可執定
人安脈病 是曰行尸 人病脈和 可保無危 中風脈浮 滑兼痰氣 其或沉滑 勿以風治
或浮或沉 而微而虛 扶危溫痰 風未可疏 寒中太陽 浮緊而澀 及傳而變 各狀難悉
陽明則長 少陽則弦 太陰入裡 遲沉必兼 及入少陰 其脈遂緊 厥陰熱深 脈伏厥冷
在陽當汗 次利小便 表解裡病 其脈實堅 此其大略 治法之正 至於大法 自有仲景
傷寒有五 脈非一端 陰陽俱盛 緊澀者寒 陽浮而滑 陰濡而弱 此名中風 勿用寒藥
陽濡而弱 陰小而急 此非風寒 乃濕溫病 陰陽俱盛 病熱之極 浮之而滑 沉之散澀
惟有溫病 脈散諸經 各隨所在 不可指名 暑傷於氣 所以脈虛 弦細芤遲 體狀無餘
或澀或細 或濡或緩 是皆中濕 可得而斷 瘧脈自弦 弦遲多寒 弦數多熱 隨時變遷
風寒濕氣 合而為痺 浮澀而緊 三脈乃備 腳氣之脈 其狀有四 浮弦為風 濡弱濕氣
遲澀因寒 洪數熱郁 風汗濕溫 熱下寒熨 腰痛之脈 皆沉而弦 兼浮者風 兼緊者寒
濡細則濕 實則閃肭 指下既明 治斯不忒 尺脈虛弱 緩澀而緊 病為足痛 或是痿病
澀則無血 厥寒為甚 尺微無陰 下痢逆冷 熱厥脈伏 時或而數 便秘必難 治不可錯
疝脈弦急 積聚在裡 牢急者生 弱急者死 沉遲浮澀 疝瘕寒痛 痛甚則伏 或細或動
風寒暑濕 氣鬱生涎 下虛上實 皆暈而眩 風浮寒緊 濕細暑虛 涎弦而滑 虛脈則無
治眩暈法 尤當審諦 先理痰氣 次隨証治 滑數為嘔 代者霍亂 微滑者生 澀數凶斷
偏弦為飲 或沉弦滑 或結或伏 痰飲中節 咳嗽所因 浮風緊寒 數熱細濕 房勞澀難
右關濡者 飲食傷脾 左關弦短 疲極肝衰 浮短肺傷 法當咳嗽 五臟之嗽 各視本部
浮緊虛寒 沉數實熱 洪滑多痰 弦澀少血 形盛脈細 不足以息 沉少伏匿 皆是死脈
惟有浮大 而嗽者生 外証內脈 參考秤停 下手脈沉 便知是氣 沉極則伏 澀弱難治
其或沉滑 氣兼痰飲 沉弦細動 皆氣痛証 心痛在寸 腹痛在關 下部在尺 脈象顯然
心中驚悸 脈必代結 飲食之悸 沉伏動滑 癲癇之脈 浮洪大長 滑大堅疾 痰蓄心狂
乍大乍小 乍長乍短 此皆邪脈 神志昏亂 汗脈浮虛 或澀或濡 軟散洪大 渴飲無餘
遺精白濁 當驗於尺 結芤動緊 二証之的 鼻頭色黃 小便必難 脈浮弦澀 為不小便
便血則芤 數則赤黃 實脈癃閉 熱在膀胱 諸証失血 皆見芤脈 隨其上下 以驗所出
大凡失血 脈貴沉細 設見浮大 後必難治 水腫之証 有陰有陽 察脈觀色 問証須詳
陰脈沉遲 其色青白 不渴而瀉 小便清澀 脈或沉數 色赤而黃 燥屎赤溺 兼渴為陽
脹滿脈弦 脾製於肝 洪數熱脹 遲弱陰寒 浮為虛滿 緊則中實 浮則可治 虛則危急
胸痞脈滑 為有痰結 弦伏亦痞 澀則氣劣 肝積肥氣 弦細青色 心為伏梁 沉芤色赤
脾積痞氣 浮大而長 其色脾土 中央之黃 肺積息賁 浮毛色白 奔豚屬腎 沉急面黑
五臟為積 六腑為聚 積在本位 聚無定處 緊浮牢□ 小而沉實 或結或伏 為聚為積
實強者生 沉小者死 生死之別 病同脈異 氣口緊盛 為傷於食 食不消化 浮滑而疾
滑而不勻 必是吐瀉 霍亂之候 脈代勿訝 夏月泄瀉 脈應暑濕 洪而數溲 脈必虛極
治暑溫瀉 分其小便 虛脫固腸 罔或不痊 無□不痢 脈宜滑大 浮弦急死 沉細無害
五疽實熱 脈必洪數 如或微澀 証其虛弱 骨蒸勞熱 脈數而虛 熱而澀小 必殞其□
如汗加咳 非藥可除 頭痛陽弦 浮風緊寒 風熱洪數 溫細而堅 氣虛頭痛 雖弦必澀
痰厥則滑 腎厥堅實 癰疽浮數 惡寒發熱 若有痛處 癰疽所發 脈數發熱 而疼者陽
不數不熱 不疼陰瘡 發癰之脈 弦洪相搏 細沉而滑 肺肝俱數 寸數而實 肺癰已成
寸數虛澀 肺痿之形 肺癰色白 脈宜短澀 死者浮大 不白而赤 腸癰難知 滑數可推
數而不熱 腸癰何疑 遲緊未膿 下以平之 洪數膿成 不下為宜 陰搏於下 陽別於上
血氣和調 有子之象 手之少陰 其脈動甚 尺按不絕 沉為有孕 少陰屬心 心主血脈
骨為胞門 脈應於尺 或寸脈微 關滑尺數 往來流利 如雀之啄 或診三部 浮沉一止
或平而虛 當問月水 男女之別 以左右取 左疾為男 右疾為女 沉實在右 浮大在右
右女左男 可以為□ 離經六至 沉細而滑 陣痛連腰 胎即時脫 血瘕弦急 而大者生
虛小弱者 即見死形 半產漏下 革脈主之 弱即血耗 立見傾危 診小兒脈 浮沉為先
浮表沉裡 便知其源 大小滑澀 虛實遲□ 容依脈形 以審証治 大凡婦人 及夫嬰稚
病同丈人 脈即同例 惟有婦人 胎產血氣 小兒驚疳 變蒸等類 各有方法 與丈夫異
要知婦孺 貴識証形 問始之詳 脈難盡憑 望聞問切 神聖工巧 愚者脈脈 明者了了
病脈診法 大略如斯 若乃持脈 猶所當知 謂如春弦 夏名鉤脈 秋則為毛 冬則為石
實強大過 病見於外 虛微不及 病決在內 四脈各異 四時各論 皆以胃氣 而為之本
胃氣者何 脈之中和 過與不及 皆是偏頗 春主肝木 夏主心火 脾土乘旺 則在長夏
秋主肺金 冬主腎水 五臟脈象 與五運配 肝脈弦長 厭匕聶匕 指下尋之 如循揄葉
益堅而滑 如循長竿 是謂太過 受病於肝 急如張弦 又如循刀 如按琴瑟 肝死之應
浮大如散 心和且安 累匕如環 如循琅□ 病則益數 如雞舉足 死操帶鉤 後踞前曲
浮澀而短 藹匕如蓋 此肺之平 按之益大 病如循羽 不下不上 死則消索 吹毛□匕
沉濡而滑 腎乎則若 上大下銳 滑如雀啄 腎之病脈 啄啄連屬 連屬之中 然而微曲
來如解索 去如彈石 已死之腎 在人審識 脾者中州 平和不見 然亦可察 中大而緩
來如雀啄 如滴漏水 脾臟之衰 脈乃見此 又有肥瘦 修長侏儒 肥沉瘦浮 短促長疏
各分診法 不可一途 難盡者意 難窮者理 得之於心 應之於指 勉旃小子 日誦琅琅
造道之玄
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by w74108520 | 2010-10-27 23:09 | 東洋医学概論

経絡私見by sirota①   

肺経私見
 (一)肺経の主治はやはり肺に関する。殊に中府や尺沢や孔最は肺疾患の反応のあらわれる処であつて、また治療点でもある。経絡経穴の妙は、診断と治療とを兼ね得ることだ。肺尖浸潤などの場合、右が悪ければ右に、左が悪ければ左に反応が出る。孔最や尺沢の反応の度を見て、疾患の程度を察することが出来る。また面白いのは、募なる中府となる孔最と両方に反応の出ている場合に、孔最に灸すると、多くは中府の圧痛か軽減する。魚際に鍼しまたは少商に鍼しても同様な変化の起ることがある。列欠に鍼して大胸筋部の圧痛の軽減または消滅することも著明な事実である。

(ニ) 肺と大腸とは表裏をなし、大腸は肺の腑であるとは内経の説であるが、これは無稽な説ではないようだ。肺経の孔最で大腸の病なる痔疾の治るのを見てもわかる。 

(三) 肺経と肺兪とは密接なる関係にあり、肺兪や魄戸に欝滞せる邪気あり圧痛強きような場合、肺経の上に圧痛または麻痺感を発現することは、臨床に際し常に経験する処である。肺経と肺兪は其治相俟つ

大腸経私見

 (一) 大腸経に於て特に奇とするは、皮膚病の治穴か悉くこの経にあることである。肩、曲池、三里、合谷がそれである。殊に三里の如きは、疔癰等の治療に重要であるのみならず、その予防にも大切である。「皮膚は肺及び大腸に属する」という内経の説と一致する。実際、患者に就て見るも、大腸に障害あるものに皮膚疾患が多い。また蕁麻疹や湿疹には肩の灸がよく効く。

(二) 内経によれば、肺と大腸とは表裏をなすという。大腸の病たる痔疾が肺経の孔最で治ることがあるのは前にも記したとおりである。

(三) 肩背部の灸をすえるときは、必ず曲池に灸すべきである。(小児にありては省くもよし)然らざるときは上気して頭痛歯痛等を起すおそれがある。これは幾度か人体につき実験した処で、幾度かの失敗の後達した結論である。曲池は逆気を引き下げる合の穴だからであろう。

(四) 迎香、禾、扶突等に鍼することもある、灸することは先ずないと云つてよい。けれども、経路の流注を知る上からは必要である。いま迎香、禾等に病ありとせんに、此等の穴の大腸経なることを念頭におき、大腸経をさぐつて反応点を見つけ、これに治を施す時は、忽ちその痛苦を去ることの出来る場合が多い。たとえば下歯痛に温溜に灸してその激痛を頓挫せしめ得るが如くにである。

(五) 大腸経は大腸兪と関する。また肺兪や魄戸とも関する。此等三穴に反応をあらわせし場合は、大腸経中の何れかの穴に反応をあらわしているものである。このようにして、大腸経と大腸兪とは其治相俟つ。

胃経私見
 
(一) 胃経の主治はやはり胃疾患に関する。ついで大腸小腸の疾患である。巨虚上廉は大腸に属し、巨虚下廉は小腸に属するという内経の説も真実である。「大腸小腸は皆胃に属す」と霊枢にある。

(二) 胃疾患は胃経に最も多く反応点をあらわすもので、胃疾患の急性症が梁丘の穴で即治し、また食傷が内庭で即治するのも妙である。医学入
門には「足の痞根即ち此穴也。大人小児の諸疾を療す。灸数百壮に至る」とある。

(三) 大腸と胃とはいずれも陽明経で相通じているので、大腸疾患で水瀉性の下痢をするとき胃経の梁丘の灸が著効をあらわす。経絡の相互関係は実に微妙である。腓骨神経などは坐骨神経の分枝であるにもかゝわらず、その神経痛の際は胃兪または胃経を使わねば本当の効果をあげ得ないことがある。

(四) なお腹部胃経の諸穴と足部胃経との相互関係も密接不離の関係にある。たとえば大巨に圧痛強き場合、陰市または三里・上巨虚等に圧痛をあらわし、大巨を治すれば陰市・三里・上巨虚等の圧痛が軽快し、また反対に陰市・三里・上巨虚等を治すれば大巨が治するというようにして、まことに妙である。この応用が手に入つて来ると、面白くてたまらぬ位である。

(五) 内経によれば脾と胃とは表裏をなすという。胃疾患に際して脾兪及び脾経を治する要のあることを知らねばならぬ。即ち胃経と胃兪とは其治相俟ち、胃経と脾兪及び脾経とは其治相俟つ。

脾経私見

(一) 此の経に於て日常最も多く用うるは三陰交である。実に応用無限と云つてよい。三陰(肝・脾・腎)の交わる処であるから、一穴でもつて三経にひゞく。即ち肝脾腎三臓のいずれの障害にも用い得る。腎臓病・胃腸病・男女生殖器病(肝経は陰器をめぐる)等に効ある所以である。

(二) 三陰交は月経の整調には欠くべからぬ穴である。多く月経の滞りたるを治する。従つて妊娠初期には用いない方がよい。妊婦に三陰交へ鍼灸するときは堕胎のおそれありという古説、必ずしもあたらないけれども、時としてそうしたことがあるので、古説を尊重した方が安全である。

(三) 脾経の関元・中極を絡うことを注意せよ。関元・中極は血の海である。月経不調に脾経の穴を用うる理がわかる。また下腹部の病気に脾経を用いて効ある理もわかる。と同時に、脾経の病気である膝関節炎またはリウマチに中極または関元の鍼灸が効くことがある理由もわかる。

(四) 血あるもの、月経の不調なるもの、婦人科疾患を有するものは、大抵三陰交に反応をあらわして圧痛がある。これは多くの人に就て実験すると、よく納得出来るようになる。

(五) 内経によれば脾と胃とは表裏をなすという。そして古人のいう脾の中には、胃腸の消化作用が包含されている。従つて消化不良、食慾不進等の胃疾患の場合に脾経に反応をあらわすことが少くない。そうした場合、地機によくあらわれる。地機は脾経のだからであろう。

(六) 糖尿病は脾の疾患の中に包含される。そして脾兪及び胃兪に反応の出ることは勿論であるが、脾経の地機に反応の出ることがよくある。

(七) 脾経は脾兪と関する。また胃兪や胃倉や意舎とも関する。これ等三穴に反応をあらわせる場合は、脾経中何れかの穴に反応をあらわすものである。脾兪と脾経とは其の治相俟つ。

(八) 脾経が大包より肺経の中府へ行くことも注意を要する。肺は土子である。つまり脾の子である。肺を治せんとするものは、また脾をも治するの要ある所以の理がわかるであろう。

(九) また手の太陰と足の太陰との相関々係も大切である。手の太陰をもつて足の太陰を治し、足の太陰をもつて手の太陰を治するというように。

心経私見
(一)素問霊枢等の生理学によれば、「心は君主の官、神明出す」(霊蘭秘典論)といい、また「心は生の本、神の変なり」(六節蔵象論)ともいい、「心は神を蔵す」という。神字を有する穴は皆心臓の病変の反応をあらわす処であつて、同時に治療点でもある。神道・神庭(以上督脈)、神堂(膀胱経)、神蔵・神封(以上腎経)、神闕(任脈)等が之である。而して神門は神の入る所の謂である。心臓病のみならず精神病・神経衰弱等にも著効ある理由がわかる。

(二) 霊もまた心の蔵する所である。故に霊道・霊台・霊墟・青霊等は心臓の病変の反応をあらわす点であり、同時に治療点でもある。

(三) 心経の諸穴は腎経の諸穴と相関することが多い。この理は心経・腎経ともに少陰の経なるを知れば立処に氷解する。少陰は少陰に相ひびく。たとえば、足の少陰経なる神封・神蔵等に疼痛ある場合、手の少陰経の少海・陰または神門に鍼灸することにより立処に緩解することが少くない。経絡の妙、実に言語に絶するものがある。

(四) 神門が便秘に応用さるる(沢田先生発見)は、心経が小腸経と表裏をなすが故である。

(五) 心経がリウマチに取り大切なる理由については、小腸経の解説に於て詳記しょう。

(六) 心経は心兪と関する。また神堂とも相関する。背部膀胱経の兪穴とそれに関する経絡とは、実に密接不離の関係にある。心兪・神堂等の圧痛が心経の少海または神門でとれるのは常に経験する所である。心経と心兪とは其治相俟つ。

(七) 狭心症または心臓部の疼痛が左背部の心兪・神堂等より左手の心経に放散することあるは屡々実見する処である。

(八) 心の募は任脈の巨闕である。兪は陽にあり、募は陰にある。陰より陽にゆき、陽より陰にゆく。兪と募とは其治相俟つ。この関係を知るときは診断治療ともに非常に楽になる。

小腸経私見

(一)此の経には重要なる穴が極めて多い。だが私の日常最も多く用うるのは臑兪の穴であつて、半身不随や脳溢血や五十肩や頑固な肩凝り、上腕神経痛、上肢のリウマチ等には必ず用うる。そうして奏効顕著である。次は天宗である。この穴も極めて応用範圍が広く、胸痛には必須の穴であり、上肢痛や上肢挙上不能にも著効がある。

(二) 養老は特に疔・癰に用うるが、手の陽明大腸経の三里や合谷と併せ用うることを常とする。癰や疔の小さなものは手三里だけでもよいが、癰には是非とも養老が必要である。何故に疔癰に小腸経大腸経の穴が必要なのであるか。難経に於てはこれに答えて「六腑和せざるときは留結して癰となる」というている。

(三) 手の太陽小腸経と手の少陰心経とは表裏をなし、相互関係を有するものであるが、此の二経の相互関係を知ることは臨床上極めて大切である。たとえば、急性または慢性関節リウマチの場合にあつては、多くの場合、心兪及び心経の穴が必要である。即ち少海・神門等の外、心の募である巨闕の要る事が多い。

(四) リウマチの場合に於ける小腸兪の刺鍼(一寸五分または二寸)は非常に効を奏するものであつて、殊に急性の場合には一鍼でもつて全関節の疼痛を緩解するほどの効を奏することがある。沢田先生は、リウマチは小腸の熱であるからその熱を取ればすぐ癒るのだといわれた。だが大腸兪の刺針でもほとんど同様の効果があがる。私はむしろ大腸兪の方を多く用うる。

(五) 任脉の関元は小腸の募である。この穴は小腸の熱をとるのに刺針して有効である。

(六)婦人の月経障碍が小腸経汲び心経に異常を来すこともよく見かける処であつて、先ずその反応は小腸兪にあらわれ、次で心兪にあらわれ、肩中・肩外・天宗・臑兪とつぎつぎに小腸経の諸穴に反応をあらわし、同時に心経にも反応をあらわすことがある。またそれが関元・巨闕等に反応点をあらわすことも稀でない。

(七)内経によると心及び小腸の色は赤しという。そしてその色のあらわるる処は「其の華面に在り」とあつて、顔であるという。顔の中でも、小腸経の顴の処に最も多くあらわれる。両顴の余りに紅色を呈して欝血せるものは、心か小腸かに故障のあるものが多い。珠に壮健に見ゆる人に於て、この証あるものは小腸募の関元に血を有する者が多い。

(八) 小腸経は小腸兪と相関する。また心経及び心兪とも相関する。小腸経と小腸兪とは其治相俟つこと、上述の如くである。
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by w74108520 | 2010-10-27 10:16 | 東洋医学概論

経絡私見by sirota ②   

膀胱経私見

(一) 膀胱経は目の内眥にはじまり、頭項背腰脚足の広範図を循つて小指外側に終る。実に大切なる経絡である。五臓六腑の兪穴は全部この経におさまり、五臓六腑の変は必ずこの経の何処かに反応をあらわす。「病の応は大表にあらわる」と内経にあるが如くである。

(二)五臓五兪、六腑六兪の穴は病名の診断に必要なるのみならず、病症の診断に必要である。同じく胃炎と病名をつくべき患者に於ても、病症の発現は必ずしも同様ではない。勿論大体共通の症候群をあらわすけれども仔細に亘つてしらべる時は病症の発現は千態万様である。従つてその治法も異るべきで、その発現せる病症の異るに従い、夫々適当な治を施さねばならぬ。この場合に当つて、経絡兪穴が実に大切となる。経絡兪穴にあらわれたる病症を精診することによつて、はじめて適当なる治法を施すことが出来るのである。

(三) 崑崙の穴が鶏鳴下痢に著効あることは、沢田先生の発見である。普通の下痢にもよく効く。

(四) 膀胱経は膀胱募(中極)と深い関係に置かれている。膀胱経の病である坐骨神経痛の激痛が膀胱募を用うることにより直ちに緩解することが少くない。また膀胱経の病である頭重が膀胱募の灸で治ることも屡々経験する処である。(中極は朝起きの名灸穴だと沢田先生はいつていた。)

(五)内経によれば膀胱経と腎経とは表裏をなすという。全くその通りであつて、膀胱経にあらわれたる反応点を攻めていると、病症は一転して腎経に集ることがある。また反対に腎経にあらわれたる反応点を攻めていると、病症が一転して膀胱経に出て来ることがある。この表裏関係を知ることは臨床上極めて大切である。

(六)膀胱経の病である坐骨神経痛は、膀胱兪の鍼灸が効きそうなものだが、私の経験では膀胱兪よりも次髎または上髎の方がきく。中でも次髎は最も大切である。それから同じ坐骨神経痛でも、その反応点が大腿後側の殷門に出るものと、外側の浮郄及び其の上方の大郄に出るものと二種類ある。下腿では陽が最も大切である。それから崑崙、京骨、通谷等を用いねば治らぬような重症のものもある。

(七) 八髎の穴に反応をあらわす場合は、多くは骨盤内の疾患を原因とすることが多い。そしてその反応は下肢後側の膀胱経にあらわれる。だが面白いことには、後頭部と関係を有することである。後頭部の欝血または過敏は頭重の原因となりまた神経衰弱を誘発し易い。八髎の穴が頭の疾患に著効あることは常に経験する事実である。これは経絡を知るものでなくては解し難い点である。八髎は大体膀胱に属すると見てよからう。(生殖器に関係することは勿論であるが)

(八) 古人の意味する膀胱とは、必ずしも現今の解剖学上に於ける膀胱のみを指したのではない。小骨盤内臓器の全部をひつくるめて膀胱といつていたらしい。

(九) 後頭部の鬱血または過敏緊張感が頭部の膀胱経に反応をあらわすことは常に経験することで、最も強反応をあらわすのは通天である。そしてこの通天への鍼または灸により、後頭部の圧痛が即座に緩解することは、まことに神効といつてもよく、これは私が昭和六年頃から苦心して発見したことで(或は他にも発見者があるかもしれぬが、)応用無限である。殊に偏頭痛に効く。常習頭痛の人にて、此穴への灸により永年の疾患が根治したものが少くない。灸は米粒大のを五壮すえるだけでよい。二三週つづければ軽快するものが多い。(勿論、この一穴のみを用うるのでなく、全体の調節をとることを忘れてはならぬが)

(十) なお、膀胱経と小腸経とは、共に太陽経であるから密接な関係があり、小腸経の少沢または後谿を用いて頭重または頭痛の治るのを屡々経験した。少沢の灸で頭部膀胱経の圧痛が即時に消散するものをも屡々経験している。

(十一) なお背部膀胱経第一行について、沢田先生の前人未到の大発見あるも、これは別に項を改めて書くことにする。(第二編第十六章、背部膀胱経第一行に就て。参照)

(十二) 背部膀胱経の第二行中に、六椎下両傍の督兪、十五椎下両傍の気海兪、十七椎下両傍の関元兪を加え、また大椎上の両傍の穴、風府の両傍の穴などを加える必要がある。因みに、大椎上両傍の穴と風府両傍の穴は、、素問の気府論、気穴論に出ていて、膀胱経に属する経穴である。附記。ー八椎下の両傍の穴を沢田先生は「膈肝の間」といつて用いていた。長浜・丸山両氏はこれを八兪と名づけた。

〔腎経私見
 (一) 霊枢によれば「腎は上み肺に連る」 (本輸篇)とあり、肺と腎とは相関することが多いようである。たとえば気管支炎や喘息は肺の疾患であるが、それが腎経の太谿でよく治するのを見てもわかる。実際、気管支炎の場合には、胸部の腎経に圧痛点をあらわすことが多い。また頑固な咳嗽が、腹部腎経の陰都や幽門に反応をあらわし、これに鍼灸すると立処にその症状が緩解することは、日常経験する処である。

(二) 「腎は耳を主る」」(陰陽応象大論)というも内経の説であつて、耳の治療には腎兪及び腎経が必要である。私は多く太谿を用いている。脈度篇には「腎気は耳に通ず。腎和するときは耳能く五音を聞く」とある。

(三) 「小腸は腎に属す」(本輸篇)というも内経の説であつて、虫垂炎の根治には小腸兪も必要であるが、腎兪や太谿が必要である。そのようにして、小腸を治するには、腎の治療を兼ねる要がある。

(四) 「腎は骨を主る」(九鍼論)といい「腎は骨髄を生ず」 (陰陽応象大論)というも内経の病理説であつて、骨膜炎や骨カリエスの場合に、腎兪や太谿を用いることが肝要である。

(五) 腎経の諸穴が心経の諸穴と相関することは、心経の解説に於て記した。(参照せられ度い。)

(六) 胸腹部腎経と背部膀胱経とが表裏陰陽の関係にあることを知るは大切である。陰は陽にゆき、陽は陰にゆく。両者を対照的に診察しまた治療することが必要である。たとえば腎兪・志室等の圧痛をとるのに肓兪中注等の穴を以てし、肩背部の疼痛をとるのに胸部または上腹部腎経を以てすることあるが如きである。よく風邪の時に背部の風門に灸しまたは鍼していると、悪寒等の外証がとれて翌日は咽喉が痛くなることがある。その時多くは胸部腎経の兪府・或中等に圧痛をあらわすものである。よつて腎経の諸穴のうち反応を見て之を治すると、咽痛がとれるといつた風に、この応用は実に興味ぶかく、また役に立つ。

(七) 腎経は腎兪と関する。殊に太谿または肓兪と密接なる関係を有する。腎経と腎兪とは其治相俟つ。

(八) 築賓は陰維脈の郄であつて、下毒作用がある。梅毒の場合、または毒素多き場合にはこの穴を用いて毒を下す要がある。下毒の灸としては背部八処の灸(附分・膏肓・・騎竹馬等沢田先生の下毒に用ひしもの)を併せ用うることが必要である。モヒ等の薬毒を治すには築賓だけでよい。

(九) 腎の募は膽経の京門である。募と兪とは其治相俟つ。私は腎兪と京門との両方を用うることが多い。(京門の位置につきては、膽経の解説にて詳説する)

(十) 腹部に於ける腎経は、任脈と胃経との間にあつて、任脈をひらく五分となつているが、それは幾何学上の線のようなものとは違い、経絡には一定の幅があるので、時には任脈をひらくこと一寸位になることもあるのである。私は任脈をひらく五分から一寸の間に指頭の圧感により判断して随意に穴を取る。但しこれは臨床上での話で、経絡の基礎学としては任脉をひらく五分とするのが正しい。

三焦経私見
 
(一) 三焦は古来学者の議論多きところであつて、中には形なくして機能のみ存すると云つた学者もある程で、研究未完成のまま、疑問のままに残されていたものである。あれほど透明な頭脳の持主であつた和漢三才図会の著者も、三焦だけには歯が立たなかつたと見える。然るに徳川の末葉三谷公器が出ずるに及んで、はじめて明断が下された。勿論、この断案といえども、議論の余地を存しないのではないが、沢田先生はこれを多年自分の思い来つた事と符節を合するが如く一致するというので全肯定をされた。そうして、なお一層その説を明確ならしめた。三谷公器は実際の屍体解剖に照し見て、上焦腑を胸管となし、下焦腑を乳糜管となし、中焦腑を膵臓となした(解体発蒙参照)。而して中焦は栄養素の消化の府であり、下焦はその吸収の府であり、上焦はこれを体に分配するの府であると云つている。(中焦ハ製営ノ府ナリ。下焦ハ取営ノ府ナリ。上焦ハ転営ノ府ナリ。其名卜実トハ三ナレドモ、其功績ノ致一ナル故ニ、之ヲ孤ノ府ト云フナリ。)要するに後天の原気なる栄養素を体内に取り入れまた分配するところを三焦と云つたのである。其の後沢田先生の出でられるに及んで、上述の如く、多年剋苦研究の後、三谷公器の説を基礎として一層これを発展させた明断を三焦について下された。それを次に述べる。

(二) 焦は熱であり、体温の原である。原気は之より出る。三焦に三気がある。宗気・営気・衛気の三が之である。 一、天地間の精気 (酸素) は、心肺を通して体内に取り入れられる。これを宗気という。上焦の作用である。二、天地間の精気(蛋白質・含水炭素等)は脾胃膵十二指腸肝臓を通して体内に取り入れられる。これを宗気という。中焦の作用である。三、天地間の精気(脂肪)は、小腸の乳糜管を通して体内に取り入れられる。これを衛気と云う。下焦の作用である。

(三) 宗・営・衛の三気、これが生命の原、十二経の根である。この根につちかえば経絡の枝葉は繁茂する。天地間の精気即ちエネルギーは、三焦を通して人間に入り来り、人間の精気即ちエネルギーとなる。「三焦は原気の別使」という意がよくうなずけるであろう。

(四) 熱の調整は三焦を本とする。原因不明の微熱が、三焦の調整により消退するもの多きは常に経験する処である。

(五) 三焦の調不調は直ちにかかつて人体の健不健に関する。故に三焦を調うるを治療の根本法則とする。陽池の重要なるは、三焦経の原穴なるが故である。下焦のとゞこおりが陽池・中の二穴で治することは誠に妙というべきである。

(六) 下焦のとゞこおりは皮膚の光沢に影響する。皮膚に細いウブ毛の多いのは下焦がとゞこおつているためであるが、灸していると体がよくなるに従つてウブ毛が抜ける。

(七) 下焦の滞りは左の天髎へ反応点を現わすことが多く、肩凝りの原因となり易い。これをよく医者は肺疾患と誤診する。そしてそれを治するには、三焦の調整が先ず必要であると、沢田先生は云われた。

(八) 三焦経は心包経と相表裏する。また膽経と関係を有する。手の少陽と足の少陽とは相互に関係しあうのである。

(九) 三焦経と三焦兪とは相関する。膻中(上焦)中脘(中焦)陰交(下焦)とも相関する。

胆経私見

(一)胆経はすべて体の外側部を経る。頭に於ても、胸腹部に於ても、足部に於ても、外側部に経絡経穴がある。すべて身体に於ける側部は少陽の経に属すると見てよい。

(二) 此の経には重要なる穴が多い。就中、正営、承霊、風池・完骨、肩井、環跳、京門、中、陽関、陽陵泉、外丘、絶骨、臨泣、侠谿等は日常用うること多き穴である。

(三) 此の経の頭部に於ける目窓・臨泣・正営・承霊・脳空の五穴は、膀胱経の曲差・五処・承光・通天・絡却の五穴、督脈経の神庭・上星・会・前頂・百会の五穴と共に、熱病を刺すの要穴である。(素問刺熱篇、水熱穴論参照)

(四) 風池ほ風の池である。即ち風邪の集る処である。傷寒論によるに「太陽病、初め桂枝湯を服して反つて煩して解せざる者は、先ず風池風府を刺し、却つて桂枝湯を与うれば兪(い)ゆ」とあつて、風邪を治するに大切な穴である。石坂宗哲は「三稜針を以て風府風池二穴の血を瀉し、其の亢熱を泄(もら)すに、数々試みて数々効を得たり」と云つている。

(五) 口の苦きは胆に属する。これを治するには胆兪の第一行を用うるがよい。また胆石疝痛には両側胆兪の第一行に鍼すること一寸位にして即坐に疼痛が緩解する。胆石症の反応が足の胆経の臨泣にあらわれることはかなり確率が高く、また頸部の胆経殊に完骨のあたりに反応の出ているものもかなりある。

(六) 胆経と胆兪とほ其治相俟つ。また胆経と肝兪及び肝経とも深い関係がある。

肝経私見
(一)此の経に於ける重要なる穴のうち最も常用されるのは、曲泉であつて、膝関節炎またはリウマチに必要欠くべからぬ穴であり、また尿道炎を治する要穴である。章門が腹膜炎の特効穴であり、肝臓疾患を治するに期門の針灸が著効あるということも平素知つておく方がよい。

(二) 肝経は陰器即ち生殖器を循るという。たとえば淋疾・子宮内膜炎・月経不調等に於て、肝兪及び肝経にその反応点があらわれ、その治穴も肝兪及び肝経の穴を用うる必要のあることが多い。

(三) 十四経発揮中には肝経に急脈の穴がないが、素問気府論に「厥陰の毛中急脉各一」とあるので、古典を重んずる立場よりいえば之を加うべきである。十四経発揮鈔にも経穴彙解にも之を増し加うべしと論じている。素問次註には「陰毛の中、陰上の両傍、相去ること同身寸の二寸半。之を按せば指に隠れて堅然たり。甚だ按すれば痛み上下に引く。其の左なる者寒に中るときは、則ち上み少腹に引き、下陰丸に引いて善く痛をなし、小腹急中寒を為す。此の両脉は皆厥陰の大絡、通じて其の中に行く。故に厥陰の急脉と曰う。即ち睾の系也。灸すべくして刺すべからず。疝を病んで小腹痛む者は、即ち之に灸すべし」とある。恐らく之は精系の上に当り、精系神経痛に効があるのであろう。

(四) 傷寒の場合に期門を刺すことについては、期門の部に詳説したが、肺炎または気管支炎で咳嗽頻発するときに期門に灸すると、即座に効果のあらわれることがある。

(五) 期門と反対側の大巨とは相関的の関係があり、期門に欝結せる陰気が大巨の灸によつて消失することのあるのは屡々経験する処である。このことは沢田先生の創唱であるが、反対側でなく同側の期門と大巨とも関係的に反応が出ることが多い。

(六) 期門に圧痛のある場合は、傷寒論の方で云うと胸脇苦満の状態である。従つて期門に圧痛ある場合は、「柴胡の証」をあらわすことが多い。口苦・咽乾・目眩・頸項強・胸脇苦満・往来寒熱・不眠または嗜眠・心煩・喜嘔・黙々不欲飲食等の、一部または全部の証を発現することが多い。「柴胡の証」は「少陽の証」である。而して足の厥陰(肝経)は足の少陽(胆経)と表裏の関係にあるのである。傷寒論に於ける三陰三陽と十四経絡に於ける三陰三陽とは必ずしも正確に一致するとはいえないが、相当一致するので、相対照して見ると、いろいろの意味で益を得ることが少くない。宇津木昆台の古訓医伝には経絡が重要視されている。

(七) 心臓瓣膜障碍で代償機障碍を来すと、右の肝臓が腫れ、期門に搏動を感じるようになることがある。これにも期門に灸して効がある。心臓病による脇下支満という状態には左側の期門の方がよくきくように思う。(八) 期門は肝の募穴である。期門に圧痛ある場合は大抵肝兪にも圧痛がある。そうして肝経の上の太衝とか中封とか曲泉とかに圧痛があらわれる。このようにして肝経と肝兪とは其治相俟つ。

督脉私見
 (一) 督脉は人身の陽部正中線を過ぐる経絡であつて、陽脉をすぶるを以て「陽脉の海」という。すべての陽脉は最後皆この督脉に来り集ること、恰も諸の河川の遂に海に流れそゝぐと同様である。またすべての陽脉はその源を督脉に発する支流であると見ることも出来る。

(二) 背腰部の督脉を脊の中行という。陽脉の海である。胸腹部の中行を任脉という。陰脉の海である。督脉と任脉とは陰陽対応し、ともに相表裏をなす。よつて治療診断ともにこの二脉を対照検索することが大切である。故に滑伯仁も十四経発揮に註していう。「任と督とは一源にして二岐なり。督は会陰に由つて背に行き、任は会陰に由つて腹に行く。一にして二、二にして一なる者也」と。言い得てまことに妙である。この、任督二脉の、「一にして二、二にして一なる」ことを了得すると、治療に当つて自在の技があらわれる。

(三) 甲乙経、千金方、外台秘要等には、陽関・霊台の二穴なきも、十四経発揮により之を補つた。中枢は類経にはあるけれど、甲乙・千金・外台にも十四経発揮にもないので省略した。類経にほ図翼中に、「中枢は第十椎の節の下間に在り。俛して之を取る。此の穴諸書に皆之を失す。惟だ気府論の督脉の下に、王氏が註の中に此の穴有り、之を考うるに及んで、気穴論に曰く、背と心と相控えて痛むは治する所天突と十椎と-という者、其の穴即ち此れなり。刺すこと五分、灸を禁ず。之を灸すれば人をして腰背傴僂(うる)せしむ。一伝に云く、此の穴能く熱を退け飲食を進む。三壮を灸すべし。常に用いて常に効あり。未だ傴僂を見ず。」とある。傴僂は「せむし」のこと。中枢に灸しても、せむしになるようなことはないようだ。

(四) 私は以上の外に、督脉上に於て、なお穴を増すことが必要だと痛感するものであつて、第四椎下の巨闕兪(千金翼方)、八椎下、十五椎下の下極兪(千金翼方)、十七椎下の十七椎(千金翼方)、十八椎下、仙骨部の正中なる下腰(千金方)等は是非とも必要である。(五) 凡そ脊柱の棘突起間に圧痛をあらわすものにありては、その何穴たるを間わず、これに鍼灸してよい。鍼の深さは解剖と対照して見て、脊髄に当らぬ程度ならは相当に深刺しても差支ない。陽関以下ほ脊髄がないから深刺してもよい。

(六) 石坂宗哲は鍼灸説約に於ていう「按ずるに項椎七。脊椎十二。腰椎五。仮椎五。其の節下及び両傍各五分の地、皆針すべく灸すべし」と。卓見である。そして両傍各五分の地というは沢田先生の所謂膀胱経第一行である。(膀胱経第一行については別に小論を作り、これを本書中に収めてある。参照のこと。)

(七) 脊柱の上に於ける督脉諸穴に圧痛を来す場合は極めて多い。脊髄炎や強度の神経衰弱にあつては全体に圧痛を来し、脊椎カリエス其他の諸病にあつては部分的の圧痛を来す。実に督脉の診断上治療上に於ける応用は無限である。(八) 督脉の諸穴は脳脊髄神経系統の病気に特に有効である。脊柱全体に亘る圧痛が、百会一穴の灸で鎮静して立処に無痛になることがある。これは屡々経験するところで、実に妙である。神経が興奮し過きていて灸の熱さが堪えられぬような人にあつては、先ず百会または会に灸して、然る後に体の方へ灸すると、案外楽に灸がすわる。また面白きは百会で脱肛がなおり、長強で脳病が鎮まることで、陰陽対照の妙まことに言語に絶するものがある。経絡というものは、実に不可思議な存在である。

任脉私見
(一)任脉は人身の陰の正中線を過ぐる経絡であつて、陰脉をすぶるを以て「陰脉の海」という。すべての陰脉は最後皆この任脉に来り集ること、恰も諸の河川の遂に海に流れそそぐと同様である。またすべての陰脉はその源を任脉に発する支流であると見ることも出来る。

(ニ) 任脉と督脉とが一源にして二岐なることは、督脉私見に之を述べてある。一源にして二岐なるを以て両者は相即不離の関係にある。治療診断ともに、この両者を対照し検索することが必要である。この任督二脉は従来一般に軽視されていたが、沢田先生は、治療に際して、この任督二脉の上の穴を非常に重要視されている。実際、この任督二脉上の穴が自由に運用出来なくては、病気の仕末が出来るものでないことは、私が日常の臨床上いつも痛感している処である。

(三) 任脉は胸腹部正中線上にあるけれど、また腹裏をも循るものであるから、深き処にも経絡があるものと知るべきである。なお、腹部の諸経は任脉を基準として定まるものである。そして、臍と剣状突起と耻骨結合部と、この三点が最も大切な基準となる。

(四) 任脉のうち最も大切な穴は、中脘と膻中と気海との三穴である。この三穴が三焦の中点となるからである。上焦は中にかかり、中焦は中にかかり、下焦は気海にかかる。

(五) 中は中焦の中点であるが、同時に三焦の中点でもあつて、上焦にも下焦にもひびく。なお、上腹部の三は三焦にひびくのであつて、上は上焦に、中は中焦に、下は下焦にひびく。「ひらけば三焦となり、おさむれば三 となる」と沢田先生は言つている。この言葉の意味は極めて深遠であつて、臨床に苦心するとき、おのずからその深意が体得される。

(六) なお終りに、任督二脉の相即不離の関係をのべる。十四経発揮の註に曰く、「夫れ人身の任督あるは、なお天地の子午あるが如し。人身の任督は腹背を以て言い、天地の子午は南北を以て言う。以て分つべく、以て合すべき者なり。之を分つて以て陰陽の雑ちざるを見(あらわ)すに於て、之を合して以て渾淪(こんりん)(まじること)の間なきを見すに於て、一にして二、二にして一なる者なり。」と。この「一にして二、二にして一」なる秘義を体得することが必要である。
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by w74108520 | 2010-10-27 09:16 | 東洋医学概論